ここでインプラント治療のリスクについて解説すると、きっと皆さん不安になってくると思います。しかしご安心下さい。以下に記す全ての事は、非常に稀なケースとしてしか起こりません。そもそも高い確率で失敗例が出るのであれば、まず医療として成り立ちませんし、ここまでインプラント治療が日常的にはなっていないはずです。しかし、起こりうる可能性がゼロではありませんし、術者の技術によって発生頻度も変わってくるものと思われますので、あえて記しています。

1. 骨の火傷

虫歯の治療を受けた事がある方はご存知だと思いますが、歯の治療を行う時に、水が出ますよね。あれは歯とドリルとの間に発生する摩擦熱で歯の神経がダメージを受けないように冷却しているのです。インプラント治療を行う場合は顎の骨にドリルを使用しますので、顎骨に摩擦熱が発生します。ここで問題になるのが、骨はかなり熱に弱いという事です。47度を超えてしまうと骨が火傷を起こしてしまいます。火傷ですから治るまで2週間ほど強い痛みが出ると言われています。

対策:吉田しげる歯科では、インプラント手術用の器械として、3i社のサージカル・ドリリングユニットDU900という冷却水を大量に出せるタイプのものを使用しています。(DU900は1分間に最大100㎖の冷却水で強力に術野を冷やします。)

 

2.蓄膿症 (上顎にインプラント治療を行う場合)

上顎の骨のボリュームが足らない場合、インプラント治療を可能にするためにサイナスリフト術という骨造成手術を行う場合があります。術後感染を起こしてしてしまうと、非常に稀ではありますが蓄膿症になってしまう事があります。

対策:吉田しげる歯科では、提携している撮影センターでX線CT撮影を行い、3次元(立体像)で治療計画を行える3次元シュミレーション・ソフトを導入して詳細な治療計画を立て、さらにソケットリフト術という、術後の不快症状が起きにくい治療法を採用しています。

 

***3次元シュミレーション・ソフトについて***
インプラント治療における従来の検査というのは、歯形模型パノラマX線写真のイメージを頭の中にたたき込み、3次元的(立体的)な顎骨のイメージを頭の中で思い描いてからインプラント埋入部位やインプラント体の種類を決定するというものでした。歯形模型では歯ぐきの形が分かっても顎骨の形が分かりませんし、X線フィルムでは2次元的なデータしか得られないですから、治療のリスクは当然上がります。

 

      パノラマX線フィルム

顎模型

 

 

例えX線CT撮影を行なったとしても、フィルムで確認する限り断層像が得られたとしても立体像は得られません。

 
X線CT画像による2次元フィルム像

 

吉田しげる歯科では、現在i-CATという日本製の3次元シュミレーション・ソフトを導入しています。

 

 

 

 

このソフトにより、今まで頭の中で大まかにイメージしていたものが、コンピューター上に立体像と平面像の組み合わせではっきりと現れます。その結果より安全で的確な治療計画が行なえるようになりました。

 

 

 

ただし、上記シュミレーション・ソフトとX線CTによる治療計画は、全ての患者さんに対して行なってはおりません。なぜかというと、明らかにX線CT撮影の必要がない方も一部いらっしゃるからです。そういった方にむやみにX線CTの撮影をしても、X線の影響を考えると百害あって一利なしとなります。そういった場合当院ではX線CTの撮影はせず、パノラマX線撮影やデンタルX線撮影、歯形模型の作製のみを事前に行い、インプラント治療を行っています。実際に吉田しげる歯科にいらっしゃる患者さんのうち、8人に1人はX線CTの撮影を行わずにインプラント治療を行っています。

  

3.神経麻痺 (下顎にインプラント治療を行う場合)

下顎の中心部分には、太い神経があります。その神経にダメージを与えてしまうと頬にしびれが出てしまいます。しびれは治る事もあれば、ずっと治らない事もあります。

対策:吉田しげる歯科では、提携している撮影センターでX線CT撮影を行い、
3次元で治療計画を行える3次元シュミレーション・ソフトを導入して詳細な治療計画を立てています。
ただし、上顎にインプラント治療を行う場合と同様に、むやみにX線CTの撮影をする事は百害あって一利無しとなりますので、全く必要の無い方はX線CTの撮影をせずに、パノラマ・X線撮影やデンタルX線撮影、歯形模型の作製等を事前に行い、インプラント治療を行っています。その結果、吉田しげる歯科では8人に1人の方はX線CTの撮影を行わずにインプラント治療を行っています。

 

私たち医療人に必要なのは、非常に稀なケースであっても、それがもし起こってしまった場合は、当事者である患者さんにとっては1分の1の出来事になってしまう事を十分に理解し、日々安全確認を怠らない事であると思っています。またそれと同時に、必要のない検査は行なわないという姿勢も大事であると考えています。

 

4.オーバーロード(過剰負担)

オーバーロード(過剰負担)とは、インプラントに無理な力がかかって抜け落ちてしまう事、あるいはインプラント周囲の骨が歯周病みたいに吸収してしまう事を指します。

ここ最近、インプラントの本数を極端に減らす事により治療費の総額を減らしていく治療法が増えていますが、我々歯科医師の間で一般的に考えられている事は、“インプラントの本数が多すぎると、いたずらに治療費が嵩んで患者さんにとってマイナスであるが、インプラントの本数が少なすぎると、インプラントに無理な力がかかって寿命が縮まってしまうので、余計にマイナスである。”ということです。

例えば、家を建てるときに柱が多すぎると、住みにくいし建設コストが高くなってしまいますが、逆に柱が少なすぎると、地震で簡単に壊れてしまいます。多すぎず・少なすぎずという適切なインプラント本数を決定する事が費用対効果を最も高める治療となります。

対策:吉田しげる歯科では、治療に来られた方にすぐにインプラント治療をするという事は行なっていません。まずはあなたの今の状態を把握する事からはじめます。そうしてあなたの希望も取り入れながら詳細な治療計画を立て、お互いの合意の後にインプラント治療をすすめるようにしています。